2015/03/25

Excel ユーザーのための Power BI 系インストールのお話

[追記] Power Query のシステム要件が v2.22 以降で変わりました。こちらを参照ください[追記終わり]
[追記] Power BI Desktop や Power BI といった Excel アドインではないサービス、製品との比較はこちら。[追記終わり]

以前、実践ワークシート協会でユーザー主催の勉強会に呼ばれた時の話を思い出して、あらためて Microsoft が現在 Excel 周りで推し進めている Power BI のアドインである Power Query、 Power Pivot、 Power View そして Power Map のインストールについて纏めてみたいと思う。

実は Power BI を使う以前の状態だった

一般の現場であった事実をご紹介する。
これは昨年の夏のことであるが、6人ほどの小規模なユーザー勉強会に協会代表理事の田中亨(Office TANAKA)と私が招待された。
このユーザーグループのメンバーは Excel のことは標準ユーザーレベル以上によくご存じであり、業務で Excel VBA も使いこなしている方々である。

Power Pivot や Power Query といった Power BI 系のアドインは、Microsoft SQL Server/Analysis Services 側の Excel アドインから派生した経緯もあり、また、Office 365 クラウド サービスの一部的な扱い方をされている関係で、PC にインストールされた Excel を主に利用しているユーザーが全くその存在を「知らない」ことが多い。これは実践ワークシート協会主催の Excel VBA セミナー の受講者の皆さんの現状を聞いても「知らない」と言うユーザーが多いことである程度は予測していた。

とはいえ、勉強会に参加するメンバーに Power BI を紹介したいと思い、事前に利用している Excel のエディションを聞いたところ、6人中、以下のような回答であった。

  • Home and Business 5人
  • Professional 1人

これでは、Power Pivot や Power Query を紹介しても、まさに「絵に描いた餅」でしかない。
なぜなら、多勢を占める Home and Business や Professional エディションでは Power BI のアドインはインストールできない、利用できないからだ。
以下が Power BI アドイン Power Query の使用前提条件である。

Power Query のシステム前提条件

マイクロソフトの office online のヘルプには2つのバージョンがあるとしている。1.5 と 2.1 (2015/3 現在の最新は 2.2)が紹介されている。

Microsoft Power Query for Excel のヘルプ

普通に Power Query のダウンロードを検索するとダウンロードセンターでヒットするのは最新版の 2.X 系である。

Microsoft Power Query for Excel (microsoft download center)

2015年3月のバージョンは 2.20.3945.242 であり、公開日は 2015/03/04 である。
このバージョンのシステム要件、特に Office のエディションは以下と明記されている。

  • ソフトウェア アシュアランス付きの Microsoft Office 2010 Professional Plus
  • Microsoft Office 2013 Professional Plus
  • Office 365 ProPlus
  • Excel 2013 スタンドアロン

この「Excel 2013 スタンドアロン」をみて多くの Excel ユーザーが自分の Excel は使えると(たぶん)勘違いするだろう。
Excel 2013 スタンドアロンとは「エディション」の名前であり、わかりやすく言えば「Excel だけパッケージされた(割高な)製品」のことだ。

英語ブログ Yes, Excel 2013 Standalone Now Includes Power Pivot.(For real, normal people have it)
Power Pivot が無ければ、Amazon から Standalone download 版の Excel を購入してみては?という記事。

Office スィートに入っている Excel、そこから、たとえ Excel のみインストールして、それを「単体」で使用しているからと言っても、それは Excel 2013 スタンドアロン エディションではない。

言えば、「個人・家庭向けの Office スィート エディションに入っている Excel は対象外」である。Solo、Personal、Home and Business、Professional エディションは個人・家庭向けの Office エディションだ。マイクロソフトの製品紹介では「ビジネス向け」に Solo、Home and Business、Professional がリストされているが、それは「日本において業務上で利用が可能」という条件の元で「ビジネス向け」といっているだけなのだ。

http://products.office.com/ja-JP/buy/compare-microsoft-office-products

Professional エディションについても勘違いしてはいけない。システム要件には 2010 も 2013 も「Professional Plus」エディションと表記されている。Plus があるのとないのとでは大きな違い(として扱われているの)だ。

OfficeProfessionalPlus2010

Office2013ProfessionalPlus

office365proplus

結局、Office の Professional Plus というエディションは法人向けの販売店・リセラーから購入した Office のエディションであり、ProPlus は Office 365 として購入しインストールした Office のことになる。

ところが、そこでも「?」となるものがある。Office 365 に含まれている Office には上記のシステム要件に「ない」エディションがある。
それが Office 365 Business である。

Office365Business

このエディションに Power Query 2.x のインストールはできない。

Office365BizPQinstall

つまり、企業向けの Office 365 だからといって使えるわけではなく、システム要件に書かれているように「Professional Plus か ProPlus」が絶対条件としての前提なのだ。
ちなみに Office 365 Business Premium という Office 365 もあるが、それも Office のエディションは Office 365 Business だ。

もちろん、つい最近利用可能になった Solo も上記の条件に当てはまらないため、システム要件を満たしていないことになる。

なお、Power Query の 1.5 についてはすでにマイクロソフトのダウンロードセンターからダウンロードができなくなっているので、この選択肢は正式にはすでにない。

ProPlus を含んでいる Office 365 は Office 365 Enterprise と呼ばれ、E3、E4 というサブスクリプション プランのみである。

http://www.microsoft.com/ja-jp/office/365/plan.aspx

前回の投稿で Excel 2016 を紹介したが、2016 では Power Query はアドイン扱いではなくなっている。
今後、これがどのような形で各エディションに展開されるかはまだ不明だが、これまでのマイクロソフトの動きを考えると、Power Pivot のように利用できるエディションのみ選択可能で、そうでないエディションはタブに表示されないか、グレイアウトされるなどの処置が施される可能性が高いと思われる。もしそうでなければその英断を称えたいところだ。

Power Pivot/Power View のシステム要件

Power Query よりはエディションの混迷度合が若干マシなのが Power Pivot だ。アドインであるには変わりないが、現在では最新の Power Pivot をダウンロードセンターからダウンロードできない。
ダウンロードできるのは Excel 2010 用のものだけだ。若干マシ、としたのは、アドインとしてダウンロードするのではなく、すでに Excel 2013 の「オプション」として Power Pivot があるか、ないかで判断可能だからだ。なお、Power View も同様である。

よって使える Excel 2013 のエディションの条件は「Power Pivot が COM アドインとして登録されているか」で確認可能だ。無ければ利用できないと判断できる。
この COM アドインに Power Pivot が含まれているエディションは Professional Plus か ProPlus のどちらかだ。

ExcelComアドイン
Office Professional Plus 2013 の COM アドイン ダイアログ

Power Map のシステム要件

実は Power Map については私自身も嵌ったクチだ。
通常は Office Professional Plus 2013 を使っているのが、Power Map をアドインとして追加しようとしたのだが、過去にできていた Power Map のアドインのダウンロードがない。いや、正確にいうと、Preview 版はあるが、Preview がはずれた正式版がない。

検索をすると Office Online の以下の記事を探し当てた。

Power Map for Excel

つまり、Power Map は Office 365 ProPlus のみ提供になったということだ。今後、Power Map Preview for Excel 2013 の更新は無い、と明記されている。
Power Map も Power Pivot や Power View 同様に、COMアドインになければ利用できない、という提供の仕方になっていたのだ。

PowerMapCOMAddIn
Office 365 ProPlus の COM アドイン ダイアログ

まさか、Professional Plus 2013 で Power Map の正式版アドインが使えなくなるとは思っていなかった。

Power BI サービスの一部だから...

上記のアドインは Power BI サービスの一部だから、、、と言われれば仕方ない。
クラウドやビックデータを扱わない Excel ユーザーにとっても、Power Query や Power Pivot はいろいろと使い道がある非常に有用な機能なのだが、これらのアドインの最終的な目的は Power View による「Power View シート」を作成し、Office 365 の Power BI サイトで組織内で共有する、というものだ。

なお、Power BI のライセンスは Power View シートを作成し、アップロードしたり、BI サイトでデータ マネジメント ゲートウェイを設定する管理者だけが持っていればよい。
共有されるシートの閲覧は、Power BI ライセンスがなくても可能であり、その閲覧のみの「ストアアプリ」がある。

Microsoft Power BI ストアアプリ

ストアアプリのみならず、iPhone/iPad 用の閲覧アプリもすでに公開されている

Microsoft Power BI アップストア

たしかに、このような使い方を前提とすれば、全 Office ユーザーがこの機能を使う必要はなく、限られたユーザーだけに絞っても問題ないという判断もできよう。
しかしながら、実践ワークシート協会の「田中メソッド」による Power BI アドインの区分けを行うと

入力・機能: Power Query
計算・機能: Power Pivot
出力・機能: Power View / Power Map / Power BI サイト

となり、ビックデータを扱うことのないユーザーでも活用の可能性があるだけに残念である。

データ分析の機能については Microsoft が力を入れているエリアであるため、今後またエディション利用条件の変更があるかもしれない。これに懲りずに興味あるユーザーはウオッチしておいて損はないと思う。

2015/03/20

Excel Preview (Office 2016 Preview for Business - Excel 2016)

Office 2016 Preview (for Business) の公開およびダウンロードが開始された。

CNET|Japan
マイクロソフト、「Office 2016」とビジネス向け「Skype」のプレビュー版をリリース

現段階の Excel では以下の変更点がトピックだろう(Preview 版であるため、今後変更が加わる可能性はまだ多いにある)
なお、この Preview 版はいわゆる「Office 365 ProPlus」であり、Office 365 ユーザーが利用できる Office であることに注意されたい。特に Power BI 系についてはエディションにより使える機能が変わる。2016 でもその制限が継承される可能性が高いかもしれないからだ。

[追記] Power Query のシステム前提条件が v2.22 以降かわりました。こちらを参照ください[追記おわり]

[データ] タブに統合された Power Query

現バージョンまでは Power Query はマイクロソフト ダウンロード サイトからダウンロードするアドインの扱いだが、2016 からは [データ] タブに統合されている。
アドインからもなくなり、Excel に完全に統合された形になっている。

2016PowerQueryRibbon

xl2016A

xl2016B

xl2016C

xl2016D

なお、Power Pivot や Power View は現時点でのプレビューではアドイン扱いで、Excel 2013 と大きな違いはなさそうだ。

xl2016E

ただし、オプションの [詳細設定] – [データ] に「データ分析機能をオンにする」というチェックボックスが追加されており、このチェックボックスで Power Pivot のリボンのタブの表示・非表示が可能になっている。

xl2016F

データモデルでもピボットテーブルの 日付のグループ化 が可能に

このタイミングで、この機能が利用可能になったのは、相当ユーザーからの要望が多かったのか、最初から計画されていて技術的目処がついたのか、いずれにせよ Excel ユーザーにとっては非常にうれしい機能追加である。

以前の投稿の「リレーションシップとデータモデル」で、データモデルから作成されたピボットテーブルでは「日付のグループ化」や「集計アイテム」、「集計フィールド」が使えないことを紹介したが、集計アイテムや集計フィールドは Power Pivot と使うことで代用が可能であるが、日付のグループ化は Excel でありながら日付=シリアル値の操作性とは全く異なるため違和感(というか、使いづらい。。。)を感じていた。

リレーションシップを張ったテーブルをピボットテーブルにして、日付のグループ化はもちろん、SharePoint データ接続でデータモデルから直接ピボットテーブルを作成しても日付のグループ化が可能であることは確認できた。SharePoint リストは日付をシリアル値として持っているので、DateTime 型の SharePoint Access アプリ テーブル(SQL Azure テーブル)からデータ接続でピボットテーブルを作成し試してみたが、同様に日付のグループ化は可能だった。今後は「階層」を使わずグループ化ができるのは大きなメリットであろう。

xl2016G

この数日触ってみた感じでは 2013 と 2016 では大きな違いは見当たらない。What’s New を見ても現時点では Excel においては違いはあまりないと言ってよさそうだ。

What’s new in Office 2016 Preview (office online 英語)

ただ、やはり BI まわりの機能強化が多い。

英語ブログであるが、以下は Excel に関する新しい機能を紹介しているので、参照されたい。

Chris Webb’s BI Blog – What’s New The Excel 2016 Preview For BI?

ユーザーが利用するデスクトップ版については、正直のところあまり大きな変化がないのかもしれない。
Office 2016 についてはタッチ版ユニバーサル アプリである Office for Windows 10 のほうが今後話題になることが多いだろう。

Office for Windows 10 と Office 2016 の発表(2015/1/23)

Powered by Blogger.

自己紹介

自分の写真
1989年新卒で日本IBMに入社しダウンサイジング担当としてホストコンピュータと繋げるオフコン、UNIX、PCサーバーのプロジェクトを担当。1997年 MSKK(現日本マイクロソフト)入社、NT4出荷に伴い企業向けサポート部門のビジネスマネージャーとして Excel 使いとなり、2002年 にMSMVPなどをサポートするユーザーコミュ二ティ部門を設立、部門をリード。2006年にMSKK退職後、企業向けのITトレーニング会社・団体に携わり、2014年頃よりPowerBI勉強会主催メンバーの一人として参画、そのコミュニティ活動で MSMVP for Data Platform PowerBI 2017受賞。https://mvp.microsoft.com/ja-jp/PublicProfile/5002635 同年にMVP Awardを返上し、アマゾン ウェブ サービス ジャパンに入社、コミュニティプログラム担当として現在に至る。